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    稍意地の悪い、きびしい調子であつた。

    房一は近い往診の帰りに河の石畳みの土手をつたつて歩いていると、広い河原を前にし土手沿ひの小高い畑地の端に立つて、特長のあるごつごつした頭骨を露あらはにし、両手を帯の前にはさんだまゝ、殆ど反そり身に立つたまゝあたりを眺めている男を見た。

    「どうも御苦労さま、暑いところを」

    「いや、あの晩の、ほんの三二日前です」

    「ね、大石さん。今夜一つ私のところで慰労宴をやらうといふんですがね。あなたもぜひどうですか。この三人だけでね」

    房一はすぐと、大石練吉のことを思ひ浮かべた。大事をとるといふ名目で、彼の対診を求めることにしたのである。

    「あゝ、えらかつたなあ」

    不幸なことに房一の予測はあたつた。いや、それ以下とも云へた。

    房一はむつつりとしたまゝ答へた。

    ――房一がさういふことを耳にしたのはごく最近である。しかし、いづれにしても房一には直接関係のないことだつた。

    最初、房一の頭の中にはペンキ塗りの清潔な外観を持つた医院が描かれていた。だが、この長たらしい築地にかこまれた家を一見するに及んで、その考へは棄てざるを得なかつた。今の大工の一言できまるまでに、何度玄関を外から眺めたことだらう。

    「うん、行くよ。――だが、夕方でいゝだらう」

    と、何か文句にならないことを口の中で云つて、もう一度低いお辞儀をかへした。

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